フィンランドの湖畔に小屋を借りる—The View From 80’s【11】

フィンランドの湖畔に小屋を借りる

「完全にリラックスするには距離が必要」とは、コペンハーゲンでホームステイさせてくれた女主人の言葉だ。

こちらは誰の言葉かわからないのだが、「モノをつくる人間にとって、旅は義務である」。

この二つの言葉をスーツケースに入れて毎夏ヨーロッパを旅することにしたのは二〇年位前のこと。

中でもフィンランドは、成田からヘルシンキまでの飛行時間が10時間弱と短いので、旅、ルートの拠点となった。

フィンランドには、湖が18万以上あるという。

フィンランド人の多くはこれらの湖の畔に別荘をもっていて夏休みをそこで過ごしている。

私もそんな暮らしがしたくて、ヘルシンキの北130kmほどのところにある古い農家の一角にある小屋を借りて何日か過ごした。

居間にソファーベッド、寝室にベッドが2台、小さなシャワー室にトイレと洗面器、最低限の調理用具があるだけの質素な小屋だ。

湖に面したサウナ小屋は共同で使う。

まわりは小麦畑で、小さな郷土博物館があるくらいで、バスも滅多に来ない。買い物は10km先までタクシーで行くしかない。

そんなところだが都会では味わえないのんびりした時間を過ごすことができた。

コロナや戦争の影響で気楽な旅ができなくなったのは、残念である。

 

(公社)日本建築士会連合会 会誌『建築士』2023年12月号 「旅から旅絵 第一二〇回」 初出

 

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