有元葉子『私の住まい考 家と暮らしのこと』

料理家 有元葉子さんは、東京の家とスタジオ、長野・野尻湖の家、イタリアの家と、3つの場所で暮らしています。そのいずれの家も、自宅、別荘という区別はなくて、どの家も有元さんが住むための家です。

この本は、彼女がいま住んでいる3つの場所の暮らすこと、建築やインテリア、収納、環境について語ったものです。

とりわけ彼女が大切にしているのは、窓から見える景色と、その家を取り巻く環境。そして、もちろんキッチンが主役。

「家の中はいくらでも自由に変えられるけれど、窓からの風景は変えることができない」とあるように、イタリアのオリーブ畑、東京の街路樹の緑やケヤキの木、黒姫山や妙高山など、3つの場所にある彼女の家の窓には、絵画として切り取られたように美しい自然の風景が広がります。

働く場としての東京の家は、築30年以上のマンションをリノベーションしたもの、仕事場であるスタジオは集合住宅の建築時に自由に設計したもの。

有元さんの娘さんで建築家である八木このみさん・夫の八木正嗣さんが設計した野尻湖の家は、丘陵地の等高線に沿って作られた、自然の地形に溶け込む家。

さまざまな場所の家が、有元さんのスタイルに合わせて選ばれて、住み心地のよい空間となっています。

有元さんが最初に購入した家だというイタリア中部ウンブリアの家は、なんと1300年代の修道院の一部だったそうです。本書では、地元の建築家と一緒に時間をかけてリノベーションしていく様子が綴られており、家づくりの楽しさを感じます。

きっとこれからのGood Over 50’sの暮らしを考えていく皆さんの参考になるにちがいありません。

 

有元葉子『私の住まい考  家と暮らしのこと』(平凡社)2017年

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