道に教えられる

マンションから続く並木道で何人もの人を追い越しながら、この街の人は何故こんなにゆっくり歩くのだろう、とぼんやり考えていた。

ふいに別の想いがよぎった。いや、この人たちが遅いのではなく、僕が速すぎるのか。

そう言えばここ数年、僕はずいぶんせっかちになった気がする。会社が謳う「効率」という言葉を頭に入れるかわりに、「ゆとり」という言葉を追い出していたのかもしれない。

足を止めて周りを見た。道の両側には可憐な花が咲いていた。並木の枝々にはピンクの蕾が膨らみ始め。その先には冬晴れの青空の下で、峰々がくっきりと浮かんでいた。

美しいと思った。ここに来て初めての経験だった。僕はこれから先、この道で、「ゆっくり歩く歓び」を教えてもらおうと思った。

この記事をSNSでシェアする

関連記事

目が幸せな家

岩崎 俊一
ここは目が幸せなマンションだね、と窓辺でしみじみと父が言う。 引越しをして2ケ月。 父母が来るのは3...

人生はリレーだ

岩崎 俊一
テレビにはふらふらになった選手が映っていた。目はうつろで既に走れる状態ではない。リタイアかな、と智子...

転校生の悲しみ

岩崎 俊一
引っ越しの日の朝、12歳の息子が荷物の消えた自室を塵ひとつ残さず掃除し、最後に思い出の詰まった部屋に...