「I am fine, but LONELY」—The View From 80’s【9】

Lis the Phoenix(不死鳥のリス)

40年余以上前、デンマーク人のリスが1人で日本にやってきました。

彼女には筋ジストロフィーという疾患があり、車いすに乗っての来日です。

友人から頼まれて、我が家でホームステイを引き受けました。

当時、保育園児だった娘とリスがあやとりをしている写真を、懐かしく見返しています。

リスは、とても明るく前向きな性格。

どんな病気になっても、必ず立ち直って、私たちのもとへ戻ってきてくれます。

私は、そんな彼女のことを「Lis the Phoenix(不死鳥のリス)」と呼んでいます。

 

一度、日本の医療関係の方と、デンマークのリスの住まいを訪れたことがあります。

その方は、自立して暮らすリスの住宅環境にとても感動していらっしゃいました。

しかし「もしリスのような状況で日本で暮らしていたら、きっと病院から出られないでしょう」とも言っていました。

リスは、好奇心のままに旅し、公的なサポートを受けながら、自立して暮らしています。

私が1964年の東京パラリンピックのボランティアとして参加したとき、車いすのイタリア選手団の明るさや行動力に驚かされました。

彼らは、たまたま車いすに使っているだけ。誰もがいきいきとしていて、「障がいはひとつの個性にすぎない」と、強く感じさせられました。

リスの生き方にも、海外と日本の障がい者の差を感じます。

 

リスの住まい

初めて日本にやってきてから4年後、リスは、デンマーク人の友人エスタと二人で再来日。

以来、私と娘がリスの住む「障がい者住宅」を訪ねたり、チューリッヒで一緒に休暇を過ごしたりして、長年家族ぐるみで親交を深めてきました。

一時はリスが重病になって、音信不通の時期も…。

でも、そこは「Lis the Phoenix」です。

見事に元気になってくれました。

ようやくメールのやりとりを再開できるようになった頃、リスはデンマーク第2の都市オルボー郊外の平屋建ての団地で、24時間介護を受けながら暮らしていました。

現在リスは、喉に穴を開け、電動車椅子の後ろに人工呼吸器をつけています。

リスは、インテリアデザインもとても上手です。おばあさんから受け継いだ家具や、お気に入りのタペストリーをうまく組み合わせた素敵な住まいに住んでいます。

いつ訪れてもきれいに整えられたリスの住まいには、北欧とのインテリア基礎力の違いを感じずにはいられません。

オールボーのリスの住まい

 

毎月1回のオンラインおしゃべり会

新型コロナウイルスで全世界的に外出が制限された3年前、「How are you?」と私から出したメールに、「I’m fine, but LONELY」という返事がリスから届きました。

それでなくても暗く寒いデンマークの冬、外出が制限されて友達にも会えない。

そんなリスの状況を思い浮かべながら、「LONELY」という言葉に、私は心を痛めました。

「そうだ! Zoomを使ってオンラインで、リスとおしゃべりをしよう!」

共通の友人エスタや、オスロに住むリスの親戚のエリザベスも誘いました。

オンラインおしゃべり会でのリス

オンラインおしゃべり会は、1ヶ月に1回。

日曜日の日本時間の午後6時(または午後7時)から、デンマーク時間では午前11時からスタートして1時間ほど。

デンマーク、ノルウェー、日本を結んで、コロナ禍の状況、物価、医療サービス、はたまた旅行や孫の話など、たわいないおしゃべりを楽しんでいます。

時々は、そこに他の人も加わります。

コロナ禍が明けても、みんなとのオンラインおしゃべり会は、続いています。

コロナ禍と共に浸透したオンラインミーティングの活用法としては、とてもいいなと思っています。

 

 

 

好きなものに囲まれて暮らしたい—The View From 80’s【8】

 

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