別冊太陽『日本の台所一〇〇年 キッチンから愛をこめて』

台所関連の本って、楽しいですよね。

別冊太陽の『日本の台所一〇〇年 キッチンから愛をこめて』は、台所好きの心を満足させる読み応え満点の内容です。

「くらしのデザイン展」セミナーでも登壇いただいた料理家 有元葉子さんの歴代の家のキッチン遍歴、近代から現代に至るまでの日本の台所の変遷をまとめた「日本の台所一〇〇年史」、ケアリングデザインYouTubeチャンネルの動画人気!建築家 阿部勤さんの「中心のある家」のペニシュラキッチンなどなど。どこから読んでも楽しい編集となっています。

「作家たちの愛した台所」では、香月泰男氏、安西水丸氏、石津謙介氏、宮脇 檀氏といったいまは亡き人たちの台所をかいま見ることができます。写真で往時を偲ぶ台所もありますが、ご本人が亡くなったあともそのままお子さんたちに引き継がれている台所もあります。

そのときどきの食への対峙の仕方や考えがそのまま台所に表現されていて、レイアウトや使い勝手、雰囲気も含めて、台所というものは、親から子へ、世代から世代へと引き継がれていく存在なのかもしれません。

新しい台所の考え方といえば、スープ作家 有賀 薫さんの「ミングル」も座談会形式で紹介されています。「ミングル」は、有賀さんがご自宅のリノベーションの際に開発された、水道・IHコンロ・食器洗浄機・食卓が組み込まれたオールインワンの“新しい形のごはん装置”。調理のできる小さなダイニングテーブルと言えばいいのでしょうか。

超高齢社会では、夫婦2人や1人暮らしの世帯が増えています。「個の台所」「小さな台所」という考え方も進んでいくかもしれません。

さまざまな楽しみ方や読み方ができる一冊でした。

 

別冊太陽『日本の台所一〇〇年 キッチンから愛をこめて』

編集:別冊太陽編集部 編

ISBN:9784582946147

発行:平凡社 https://www.heibonsha.co.jp/book/b605650.html

目次
〈巻頭特集〉
■料理と半世紀 私の台所考。火と水と台さえあれば。文=山田真理
玉村豊男/一日遊べる、一生遊べる、男の台所。
有元葉子/美味しいものに惹かれて集まる、みんなのキッチン。

■日本の台所一〇〇年史 監修・文=須崎文代
1 近代の幕開け――文明開化と衛生問題
2 生活改善と台所の理想像
3 戦災復興とのDKの普及
〈年表〉にっぽん台所クロニクル

■民藝と台所 高林兵衛邸
小窓でつながる、十二畳の親しみ。文=鞍田 崇

■建築家の実践1958-2020
・時代をつくった台所「ペニンシュラキッチン」中心のある家(設計=阿部 勤/一九七四年) 文=長井美暁
・生活の中心としてのキッチン
〈対談〉阿部 勤 × 植田 実
・導火線としての キッチン 十選 選・文=植田 実

■作家たちの愛した台所 文=金丸裕子
香月泰男/家族の幸せを願って描いた厨房の壁画
安西水丸/台所こそ家の要
石津謙介/ファッションの神様の台所
宮脇 檀/生活を愉しんだ建築家の台所

■エッセイから読む作家たちの台所 文=野村麻里
水上 勉/ 幸田 文/リリアン・ヘルマン&ピーター・フィーブルマン/荻 昌弘/立原正秋/ 立川談志/池田満寿夫/ロートレック/小倉遊亀/ 石井好子/檀 一雄/M・F・K・フィッシャー/古波蔵保好/沢村貞子/マレーネ・ディートリッヒ/高峰秀子/向田邦子/津村 喬/中里恒子/岡部伊都子/大村しげ

■台所の現在とこれから。
・台所に歴史あり人生の物語あり 文=大平一枝
・理想のキッチンを追い求めて。 文=阿古真理
・〈座談会〉「ミングル」から考えるこれからの家事と台所。
有賀薫/樋口直哉/阿古真理/青木亮作
・「縁食」の時代へ。 文=藤原辰史
・房総の「小さな地球」 循環する里山の中心にあるコミュニティキッチン 文=成合明子、

・はざまのじかん。山田孝之 文=松井健太郎
・理想のオーダーキッチンを求めて。
暮らしを彩る、クチーナの原点は、一貫したジャパンメイドと職人の手と眼へのこだわり。

■エッセイ
印度カリー子/栗原 友/平松洋子

 

Eテレ「暮らしの中心 ひとりの居場所 / 建築家 阿部勤」

小野由記子のキッチンリビング『毎日立ちたい わたしの台所』

 

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