長谷川嘉哉『ボケ日和―わが家に認知症がやって来た!どうする?どうなる?』

私事ですが、昨年後半は、離れて暮らす80代の母と90代の父が相次いで入退院を繰り返し、兄夫婦と私は一気に介護年に突入しました。

日頃から長谷川医師のブログ『転ばぬ先の杖』を愛読していて、介護や認知症予防について知っているつもりでいましたが、いざ自分の両親のことになると、初めて簡単な認知症テストに立ち会ってドキドキしたり、原因不明の症状に何も手助けできなかったり。自分が何もできないことに、どよーんとする場面が多々ありました。

「あのときにこの本が出版されていれば」というのが、この本を手にした最初の感想でした。

本書は、認知症の進行具合を、春・夏・秋・冬の4段階に分けて、そのとき何が起こるのか?について、患者さんの事例を交えて書かれたエッセイです。

月1000名の認知症患者さんを診察するという長谷川医師ならではの豊富な知識と的確なアドバイスは、親の認知症を恐れている家族にとっては、暗闇で灯りを見つけた想いでした。

ともすれば深刻になりがちな多種多様な認知症患者さんのエピソードも、長谷川医師の軽妙な筆にかかると、なんとなくおかしみのある、心温かなものになって伝わるから不思議です。

それは本書の根底に、まず介護者が心身共にラクになれるように、という想いが流れているからにほかなりません。

・認知症患者の家族だった私が、何より強く感じていること。

 それは、介護者の心と生活に余裕がなければ、患者さんを笑顔にすることはできないということです。

・だって、守る側の人間に余裕がなければ、結局は守られる側の患者さんだって幸せになれんでしょう。

 

我が家は「第1章 ちょっと変な春」位なのでしょうか。

「待つことが難しくなっている」「実の子は、目が曇りがち」「今まで通りを求めない」「料理は『作らない』のではなく『作れなくなる』」など、心にズキンズキンと突き刺さる言葉が目白押しです。

でも、そんなときにはどう対処したらいいのか、どう心構えすればいいのか、という解決策が、明るく具体的にアドバイスされている点で、ほっとさせられます。親を介護する妻に対してねぎらいのない夫に対しては、ときに怒って諭す、人間味のあるアドバイスなのです。

それから、本書ではデイサービスの効用についても丁寧に説明されています。我が家でも、気持ちや身体能力が低下していた母が、デイサービスへ行くようになってから、心身共にずいぶん明るく変化したので、第三者と接するデイサービスの効用を実感しています。

我が家のような介護見習い段階の方も、介護真っ盛りの方も、まだまだ先の話という方も、みんなが本書を読んで、認知症でどういうことが起きるのかについて知っていれば、社会全体で認知症患者さんをあたたかく見守ることができるのではないでしょうか。

春夏秋冬の各章毎に、『大家さんと僕』で人気の矢部太郎さんのイラストが添えられているのも、ほのぼのします。

4月21日に発売されたばかりの本書は、Amazonの「脳・認知症」カテゴリでもベストセラー1位の人気(2021年5月13日現在)。Good Over 50’sにおすすめの本です。

 

『ボケ日和―わが家に認知症がやって来た!どうする?どうなる?』

著者:長谷川 嘉哉

イラスト:矢部太郎

ISBN:978-4-7612-7544-0

出版社:かんき出版

https://kanki-pub.co.jp/pub/book/details/9784761275440

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