あなどれない家庭事故【50代リフォーム⑨】

交通事故より多い転倒・転落事故

「家にいれば安全」と思っている方も多いと思います。

ところが、厚生労働省「人口動態調査」における高齢者の「不慮の事故」による死亡者数は、平成22年以降平成28年にかけて、毎年 30,000 人以上となっています。交通事故、自然災害を除く不慮の事故による総死亡者数のうち、65歳以上の高齢者の割合は 8割以上です。

「高齢者の不慮の事故による死亡者数(平成28年)」のうち、特に「誤嚥等の不慮の窒息 8,493人」「転倒・転落 7,116人」「不慮の溺死 及び溺水 6,759人」については、「交通事故 3,061人」より死亡者数が多いことに驚くでしょう。

特に「転倒・転落」事故 については、75 歳以降、5歳年齢が上がるごとに人口 10 万人当たりの死亡者数はほぼ倍増しています。

また、東京消防庁の「救急搬送データ」(平成28年)から「事故種別ごとの高齢者の救急搬送者数(総計 72,198人)」を見ると、「転倒・転落 58,351人 」が最も多 く、全体の約8割。発生場所別にみると、「転倒・転落」は、家庭内では「居室、階段、廊下、 玄関、ベッド」などで発生しています。

高齢者の「おぼれる」による事故については、 92.3%(535 件 中 494 件)が「住居等居住場所」における「浴槽」で発生しています。発生月では、 11 月~3 月にかけてが多く、寒い季節の浴室での事故が全体の約7割を占めています。

家庭での事故を防ぐには

家にいる時間が長くなったり、身体の機能が低下したりする要因が考えられますが、住宅そのものに起因することもあります。

入浴という行為は温度差が激しく、血圧の上下幅が大きいことから、浴室内での事故につながります。できるだけ温度差をなくすために、脱衣室、浴室の暖房に工夫が必要です。

転倒・転落は、建物との関連が深い事故といえますが、平らな部分でつまずいての転倒が多いことに驚きます。滑りやすい床、カーペットなどの端部のめくれ、ちょっとした段差やコード類がつまずきの原因になります。

段差をなくすこと、手すりをつけることなどは、こうした事故を防ぐという意味で、バリアフリーの基本になっています。

高齢での家庭内事故は、事故をきっかけに寝たきりに至ることが少なくありません。事故を少なくする手立てを考えることが大切です。

吉田紗栄子、寺林成子著『50代リフォーム 素敵に自分流』(財団法人 経済調査会)より
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