人生、後半戦がおもしろい【小島さんとマリーさんの暮らし③】

2人の住まいを兼ねたハウススタジオ「Marie’s Kitchen & Live Studio」の建築プランは、まず土地探しから始まった。

希望は、海が見える高台!
しかし、あちらこちらを見てまわったが、なかなか理想の場所はない。

不動産屋には、『何もない場所だが、もし頼朝ライン(熱海山上にある上多賀〜土橋間の道路)沿いに物件が出たら教えてほしい』というマリーさんの想いを伝えてあった。

そしていまから7年前、偶然にもまさに頼朝ライン沿いの山林が物件に売り出されたのだった。海が見える高台ではあるが、山林そのものという物件。海への眺望がとれるのかどうか微妙な場所だったが、ある森の隙間から少しだけ海を望む景色が見えた!

2人共が、その景色にインスピレーションを感じた。

しかし、この歳になると、想いが見えてくるとせっかちになりがちだ(笑)。
出来るか、出来ないかは、まずプランしてから考える。
「あ~したい」
「こ~したい」
2人とも、考えたり、計画したり、そのプロセスが楽しいのだ。

最初の夢を描いたプランは、気の利いたおもてなしができるミニホテルの計画だった。
どこまでのモノ・コトが出来るのか?
設計前の絵描きを始め、おおまかなプランが見えてきた時点で、実現させるには肝心の先立つものとの相談が必要になる訳だ。

ラフプランで概算し、いろいろな事を総合的に考えて、あれこれと検証すると、そうは簡単にはいかない。やはり予算の問題もある。さらにホテル実務をやってくれる人や、諸々のことを考えていくと、「小さくとも宿泊施設の運営は、我々の年齢的に難しい」と判断した。

それから、次のステップに頭を切り替えてみる。
ならば、いろんな人たちとコミュニケーションがとれるような、コンパクトな施設はどうだろう?
またあれこれと考えたり計画したりが始まり、現在の建物案にかたまって、設計プランに入った。

名称も「Marie’s Kitchen & Live Studio」として、食と音楽と憩いの場をつくろう!というコンセプトが決定して、具体的な内装計画に入った。

理想はどんどん膨らんでいく。
内装プランにはアンティーク材料を使いたいと思い、以前からの知り合いが静岡市の三保で営んでいる、南仏のアンティーク建材を扱うbon côté(ボン コテ)まで何度か足を運んで、建材を探しに通ったり。我々は、こんなものづくりのプロセスが楽しくて仕方がないのだ。

bon côtéで見つけた、フランスの農家で使われていたというアンティークの重い扉に合わせて、スタジオの玄関サイズは決まった。

そして、まだ未完成なところもあちらこちらにあったが、ひとまずの完成を迎えて、Marie’s Kitchen & Live Studioは、出来上がった。

しかし、完成して営業しているいまも、あれこれいじっている。ひょっとすると、この建物は、体力がある限り完成しないという“永遠の未完成ハウス”なのかもしれない?

この後も、次の改造プランが動き始めそうな気配がある。

結局は、プロセスを楽しんで、出来上がると飽きてしまう性質なのだ。なので、また次の想いを考える…の繰り返し。だからMarie’s Kitchen & Live Studioは、“永遠の未完成ハウス”だ。

PHOTO:KAZUO KOJIMA
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